君のことよく知らないけど
広いリビングの中央に、茶色と灰色の中間みたいな変な色のソファがデーンと置いてあった。スエードみたいな変な革。でも、革の匂いはほとんどしない。
立ってんのもなんだし、と思ってそこに座る。ソファの前にコーヒーテーブルがあって、よくわかんねえサプリみたいなボトルが3、4個並んでて、なにやら怪しげなカプセルを収めたシートが散らばってる。ヤバいやつだったらどうしようね……。
端末を開いて仕事のメッセージに返信してたら、ふとションベンしたいな〜と思い廊下へ戻った。扉が1、2、3個。1個は半開きになってて、覗いたら寝室だった。でっかいベッドが部屋の真ん中にあるのが見える。もう1個は三怜が消えてった浴室だから、残りのひとつがトイレかな、と扉を開く。ホテルのトイレみたいにピカピカのトイレで、安心した。便所のきたねえ家で一夜を過ごすのは嫌だ。
ジョロジョロやってる間に、ドアの外から悲鳴が聞こえてきた。
「リッ、リオンさんっ? ど、え、帰っちゃった?」
「トイレ〜〜」
手を洗いながら大声で申告。
「トイレ? お、おしっこですか?」
無視して、黙ってドアを開ける。三怜がドアの真ん前に立っていた。グレーのTシャツに、紫色の半ズボン。白に近い金髪が、湿気を含んで柔らかそうに目元に垂れる。
「早かったじゃん。ちゃんと洗ってきた?」
「はい、ちゃんとキレイにしました。あの、もう、や、やりますか?」
「やろっか。いくら?」
「えっ? あ、ああ……いくら、なんだろ……」
そういやアフター初めてって言ってたな。
「売りやんのも初めて?」
「は、はい……リオンさんは? よく買うんですか?」
「そーね。よくでもねえけど」
「そ、うですか……」
三怜はなんだか急にしょんぼりした様に黙り込んだ。値段わかんないと気持ち悪りいなあと思って、どうしようかと頭をかいてたら、「あ、後でググるので、後でもいいですか?」と言ってきた。
ググって出てくるかな〜と思ったけど、めんどくさいので俺も頷いた。
三怜は俺の手を取ると、半開きの寝室へ連れてった。手を引っ張るのはこいつの癖らしい。女みたいなやつだ。
「ほんとにシャワー、浴びなくていいの? 俺」
「いいです」
三怜はニコッとした。メンズのシャンプーのCMみたいだった。
「三怜くん、売りやったことないってことは、好きで男と寝てんの?」
「あ、えと……そう、かな?」
「彼氏いるの?」
ベッドに腰を下ろし、ベルトのバックルを外しながら聞いたら、三怜が隣に寄り添ってくる。
「い、いないです」
「じゃ、彼女?」
「いないです」
うっとりした目で俺の頭らへんを見ている。
「これ気になる?」
耳に手をやって聞いたら、「はい、めちゃくちゃカワイイ……」と言うので、なんだか悪い気はしない。
「触りたい?」
「さわっ、触りたいっ」
「いーよ」
三怜の方に体を向けると、速攻手を伸ばしてきて俺の耳を触ってくる。全体的にさわさわしてから、だんだん耳の先っちょを指でピンピンと弾くのに夢中になってる。
「キャットレイスとやんの初めて?」
「初めて……」
目線を落とすと、半ズボンの真ん中がもっこり盛り上がってるのが見えた。手を伸ばして、触る。
「あっ、ちょ、ちょっと……」
「勃起してんじゃん。ちんこ見せてよ」
「あっ、は、はい……」
はい、と言いながら両手を俺の耳から離さないので、手伝ってやることにした。腰に手を伸ばし、半ズボンをズリ下げる。下着は暗い群青色のボクサーだった。地味なパンツだが、ちんこは派手に膨らんでる。
「ちんちんでっかいじゃん。エッチだね」
「え、えっちだよ……えっち、したい、しよ……?」
三怜は相変わらず俺の耳を触りまくりながらのしかかってきた。
「いつまで触ってんの、おもてえし……」
押し潰されそうになりながら苦情を言う。三怜は「ごめんなさい」と謝まりながらやっと手を離し、その手で今度は俺の服を脱がそうとしてきた。
「リオンさん、腰細いね……可愛い……」
「そりゃどーも」
俺のTシャツを脱がせて放り投げると、裸の腰にむしゃぶりついてくる。風呂上りのせいか、なんだかねっとりとした湿気が俺の皮膚にも移る様な気がした。
「下も脱がせていい?」
上目遣いに甘えた声で聞いてくる。これじゃあ俺が商品みたいだなと思ったが、好みじゃないとは言えモデルの様なイケメンに求められて満更でもないので「いいよ」と許可してやる。
「はぁ……はぁ……いい匂い……エロいぃ……」
絵に描いたような綺麗な顔をデレリと歪めて、キモい吐息を吹き散らかしながらファスナーを下ろし、デニムを引っ張る。トランクスもむしり取られると、俺は真っ裸で三怜の腕の中にいた。三怜のTシャツが裸の胸に擦れてゾワゾワする。
「りおんさん、しっぽ……しっぽ触っていい?」
俺の耳に唇をつけて、変態オヤジみたいな口調で聞いてくる。
「尻尾はダーメ」
「な、なんで? なんで?」
目を合わせて泣きそうな顔で迫られたら、グルルと俺の喉が鳴った。尻尾はキャットレイス同士じゃないと、触らせるのは怖かった。
「もっと仲良くなってからね」
ほっぺにチューして誤魔化すと、三怜は真っ赤になって目をとろんとさせた。ちょろいやつ……。
「じゃ、じゃあ……もっと仲良くしよう……?」
三怜が脚を絡ませてきて、でっかくなったナニを俺の太ももに擦り付ける。柔らかい産毛が皮膚を撫でるのがくすぐったい。腕はつるつるなのに、足にはしっかり毛が生えているらしい。
「俺と仲良くしたいの?」
「したい……」
バキバキのちんこを押し付けてきながら、アイドルみたいなブリッ子顔で見つめてくるのがちょっとシュールな三怜くん(34)。いいね。俺は嫌いじゃない。
「何して遊ぶ?」
「……えっちなこと」
顔を背けるのでまた前髪で顔が隠れた。今更何を照れてんだか。
「三怜くん、初めて会ったお客さんとエッチしちゃうの?」
「し、しちゃ、う……」
「まだお金も貰ってないのに?」
「うん……」
「タダでヤられちゃったらどうするの……?」
ちんこは無視して尻の方に手を回し、ケツの割れ目に指を這わせた。金髪の隙間から覗く白い耳に口を寄せる。人間の耳は毛が無いから舐めやすかった。「ねえ。タダマンされちゃうかもよ?」
「あっ、あ……タダマン、していいよ……ヤっていいよ」
「いいの? じゃあタダでちんこも舐めてくれる?」
「なっ、め、舐め、舐めるっ……」
三怜はガバッと体を起こすと、ズリズリと膝立ちで遠ざかり、両手で俺の膝をガシっと掴んだ。開いた太ももの間に顔を突っ込むと、口がつくよりも先に三怜のヨダレが俺のちんこに垂れてくる。
「ちんちん好きなの?」
じんじんと熱い粘膜に包まれて、思わずため息をつきながら三怜の頭を撫でていた。細くてふわふわの髪が指に気持ちいい。
「ふひ。ふひれふ」
好き、好きです、かな?
「いい子だね。おいしい?」
「おいひい……」
三怜は目を閉じてうっとりしてる。血走った目が隠れているとその様子は穏やかで、まるで親猫が子猫を舐めるかの様な慈愛の空気に満ちていた。
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