君のことよく知らないけど 〜延長戦〜

18. 三怜

「ねえ、お願いですから。大好きなんです。全部俺にくれないといやです」
 リオンさん、心底うんざりした目で俺を見上げてた。薄い唇を軽く噛んで、その隙間から喉を鳴らす音が漏れる。その唇の端が、唾液で濡れ光っている。腰をゆっくり揺さぶると、気持ちよさそうに目を細め、滴り落ちそうになる唾液を唇を噛んで抑える。見るからに気持ちよさそうなのに全然声を出してくれない。俺は手を伸ばしてリオンさんのちんちんを押さえた。
「三怜、」
 リオンさんが濁った声で俺を呼ぶ。
「なんですか」
「いくって、もう。止めんなよ、いきたいの」
 いきたいの、だって。可愛いんだから。
 俺はメロメロになりながらも心を鬼にした。
「だめ。もっと可愛いとこ見せてください」
「耳は? 可愛いだろ、触っていいから」
「別にさっきから触ってます。エッチな声聞かせてください」
「うるせえな、エッチな声だろいつも」
「そうですね」
 ちんちんをキツく握りながら腰を入れる。リオンさんはまた聞いたことない呻き声を響かせる。
「気持ちいい? 動物みたいな声出てますよ」
「……お前もヘンタイみたいな声出てるよ」
「ヘンタイですもん」
 膝を開いて踏ん張り、上体を更にかがめて肩からシーツに突っ込む勢いでリオンさんを抱え込む。体重をかけてえぐりながら手で亀頭やら裏筋やらをいじめまくると、リオンさんはジタバタ暴れながら逃げようとする。
「気持ち良すぎて逃げたいの? だめですよ、可愛い、もっとする?」
 リオンさんをいかせるまでいかないつもりだったけど、いつも自由でしなやかで伸び伸びとしてる彼がドタバタと暴れてる姿を見てたら、俺もいよいよ頭がおかしくなってきた。体にコントロールがきかなくなり、何を口から発しているかも怪しくなってくる。
「気持ちいいって、言ってんだろ、もういい、もういくんだってこら」
 リオンさんも呂律の怪しい発声でお経のようにブツブツ何か言っている。
 リオンさんのちんちんを爆発するまでいじるはずだった俺の手が何故か勝手に持ち上がった。
 俺はそのことに気付いていなかった。
 リオンさんはほっとしたように暴れるのをやめた。
 俺の手は安らかに呼吸を再開した彼の頭に伸び、ふわふわの耳と丸い後頭部を一緒くたに鷲掴み、思い切り枕に押し付けた。
 リオンさんのくぐもった呼吸音が俺の神経の一部を呼び止め、微かに浮上した理性が手の力を弱めてくれた。
 俺は彼の頭を押さえながら話しかけていた。
「俺いい子にしてましたよね。だから入れさせてくれたんでしょ? 俺にいい子で居させてくださいよ」
「……やめ……みれい、」
 枕に押し付けられた唇の端が俺の名前の形に動く。いつか死ぬ瞬間が来たら思い出したいこの光景を、目が脳に刻みつけている。その間も口は勝手に動く。

「リオンさん大好き」
「もっと見たことないところ見たいんです」
「見せてくれますよね」
「俺なんでもしますから」
「リオンさんのこと大好きだからどんなことでも我慢できるんです」
「知ってますよね?」

 気がつくとリオンさんは苦しそうに喉を鳴らしながら震えていた。そんなところ見たことがなかったから、両目をしっかりと開いて眺めながらまた腰を動かした。手を離したからリオンさんは顔を上げたけど、そこから出てきた声は「可愛い」とか「えっち」とかそんな声じゃなかった。
 まず始めに野生の動物が天敵を威嚇するような呻き声が響き、そこから徐々に声と呼べるような音までボリュームアップし、そのボリュームはあっという間に最大値と呼べるほど上がり切る。もはやただの声じゃなく、わめき声にまで進化し、俺の心拍数も最速の数値を叩き出した。
「リオンさん、声、おっきい」
「う、ぐ、ぁぎもぢいぃいく、も、やめ、やばいいく、いく!」
「いっていいよ、もっと? していいよね、ほら、もっと声出していいよ」
「んうぅうううい、く、い、くぅあああっ! あ、ぐ、んんんんぅ!」
「りおんさんすごい締まる……きつい、締ま、ねえすごい締まるっ」
 あったかいリオンさんの中身にもっと締め付けてもらおうと、俺は彼の腰を抱え直して腰を振る。一応まだ外で出すつもりはあったから、脳の片隅で(あとちょっとだけ、あとちょっとだけ)と唱えていたのに、リオンさんが突然射精し、その精液が俺の手首にかかり、その温かさに俺のちんちんより脳が限界を迎えて俺もいきなり射精してしまった。
 リオンさんはぐにゃりとシーツに沈みながら、「死ね」だの「殺す」だのとうわ言みたいに呟きながら気絶した。


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